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医療法人M&A

はじめに
M&A(合併・買収)は、会社だけでなく医療機関の世界にも広がっています。ただ医療機関は、会社と異なり、株式を発行していないので、大量買占めなどの手法を用いることができません。このような状況から敵対的・乗っ取り的な買収ではなくて、むしろ事業承継・事業救済としての側面も持っていると言えます。

個人診療所と異なり、医療法人は複数の病院・診療所を開設する事が可能となります。特に赤字の病院診療所を買収する事で、規模を大きくする事が可能となります。更に、福祉事業も行う事ができる事から、医療法人を中核とした医療福祉事業集団を形成する事も十分に可能となります。

昨今は、診療報酬の引き下げや診療所の乱立で医療機関を取り巻く状況も厳しくなっています。経営不振や後継者問題もM&Aが増える要因であると考えられます。おおきな意味でもM&A(合併・買収)は、会社のみならず医療機関においても積極的に行われるものと考えられます。

▼ M&A・資金調達の内容 ▼ 医療法人M&A手法
▼ 医療法人M&Aにおいて注意する点  ▼ M&Aによるメリット
▼ 一部の病院等の買収・売却 ▼ 病院を買収する候補(買取る候補) 
▼ 当事務所の関わり(依頼のメリット)

M&A・資金調達の内容

医療法人においては、行政当局の許認可を必要とする事項が多いと言えます。医療法人を設立するについても、自由に行うことは出来ず行政機関(都道府県知事)に対して申請・チェックが必要となります(医療法44条)。 また、ベッド数の総数は地域ごとに大枠が決められています。大きな病床を有する病院を新規に設立したり、既存の病院がやみくもにベッドを増やすことが出来ません。増床(ベッド増やす)する場合にも、認可が必要です。
このような視点から、医療法人のM&Aは病院自体を買収すると言うより、ベッドを買取ったり、事業を承継すると言えます。さらに、機関債(会社の社債みたいなもの)を発行することにより資金調達の幅も広がります。

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医療法人M&A手法

株式会社と異なり、医療法人には医療法の規制があります。また株式等を多数発行しているわけでは無いので、大量買占めを行えば経営権が取得できるものでもありません。ただ、用いる手法・考え方は、会社の場合とあまり変わりません。

【経営権の取得】

医療法人の最高意思決定機関は、社団の場合は社員総会・財団の場合は理事会です。すなわち、社員、理事の過半数を押さえることができれば、経営を支配することができます。ただし、定款の記載によっては、理事会などに日々の業務執行を委任している場合も考えられます。このように理事会に業務執行の決定を委任している場合には、社員の地位を得たとしても、実質的には、医療法人の業務決定が制限されることになります。個々の医療法人の定款を精査して、理事会に委任されている業務執行の範囲、社員総会において決議することができる範囲をしっかり監査(デューデリジェンス)することが必須です。理事についての構成も考慮することも必要といえるでしょう。

社団場合には、社員の地位を譲り受ける方法が考えられます。ただし、社員の地位は一身専属的なものと解されます。すなわち、社員としての地位は譲渡の対象ではありません。医療法人のM&Aの場合は、社員は退職金などを支払って退社してもらうことになります。持分がある場合には買取り、持分が無い場合には、退職金を支払うなどの方法を用いることになると考えられます。ただ、株式のように多数を買占めるように簡単には進みません。

【合併】

医療法人の合併にも、吸収合併・新設合併とあります。この合併の要件は、医療法57条に規定されています。

1. 社団の場合は、総ての社員の同意が必要です(医療法57条1項)。社団は社団とのみ合併することができます。

2. 財団の場合は、寄付行為に合併出来る旨の規定があり、かつ、理事の3分の2以上の賛成が必要です(医療法57条2項・3項)。財団は財団とのみ合併することができます。

いずれの場合にも、都道府県知事の許可が必要です(医療法57条4項)。許可に際して、医療審議会に諮けられます。これが敵対的買収を仕掛けられない理由の1つと言えます。

【事業譲渡】

医療法人は複数の病院を開設することができます。複数開設している病院の1部を他の医療法人に譲渡する方法があります。会社における事業譲渡と同様です。この事業譲渡であれば、合併と異なり、債務の一切を承継する必要がありません。偶発的債務などを遮断することも可能となります。


医療法人M&Aにおいて注意する点

医療法人M&Aについて注意する点が幾つかあります。持分のある社団医療法人の場合は、持分の払戻しが生じる可能性があります。設立当時より医療法人の財産価値が上昇している場合は特に注意が必要です。

会社M&Aと異なり、医療法人M&Aについては、行政当局の関与があるため事前に相談等の根回しを行う必要があります。戦略立案からクロージングまである程度の時間が必要となります。クリアする手続きは会社の比ではありません。タイムスケジュールを含めた総合的な戦略が必要となります。

医療法人M&Aを進める過程で、行政当局から指導が行われる場合もあります。このような場合も十分に想定して、幅のあるM&A戦略を立案する事も肝要です。事業譲渡(病院・診療所の一部譲渡)については、医療法に直接の規定がありませんこのような場合は、特に行政当局と事前折衝が必要となります。具体的にどのような手法を選択する事がベストとなるかの見極めも重要となります。

医療法人M&Aにおいては、幾つかの作業を同時進行する必要があります。例えば、行政当局と折衝を行いながら、買収先のデューデリジェンスを行ったり、手法を選択したり、定款変更の手続きを行うなど複雑な事務作業が多く存在します。この点も視野に入れる必要があります。

M&Aによるメリット

M&Aを行うことにより、買収される側としては廃業するよりも金銭的なメリットがあります。これは個人病院・医療法人の場合も同様です。個人開業の病院であれば、廃業の場合には、何らの金銭の受取がありません。土地などの不動産があれば、譲渡所得くらいでしょう。ビルやマンション開業であればこれすらありせん。医療法人(持分を有する社団)であれば、残余額について出資者に払戻し金額が受取となります。

M&Aでは、譲渡対価(売却益)が生じます。これは、病院等を継続することによる将来的な価値を算定して行われます。病院の資産(不動産など)と病院自体の価値(診療報酬など)を合わせて算出するので、単なる譲渡所得よりも高くなる可能性があります。

買収する側としては、既存の病院を買取ることにより、新規で設立するよりも手続き的な負担を減らすことが可能となります。また、地域ごとに病床(ベッド数)が決められている事を考慮すると、既存病床を買取ることは規模拡大をスムーズに進めることが可能となります。通常の手続きで増床を行う場合には、都道府県知事に対して申請することが必要です。もっとも大幅な増床は認められないことが殆どです。このような事情を考慮すると、既存のベッド数をM&Aにおいて確実に確保することができます。

一部の病院等の買収・売却

医療法人においては、複数の病院等(診療所含む)を経営している場合もあります。この場合に医療法人自体について分割することはできません。一部の病院など(診療所含む)を他に売却することになります。

買収する側としては、新規に病院開設許可申請を行うことになります。売却する側としては、廃止届を提出することになります。合併と異なり、一部の売却では、権利義務について承継されません。新しく開設することと同じです。さらに、売却側・買収側のいずれにおいても定款の変更が必要となります。定款の変更については、都道府県知事の認可が必要となります(医療法57条4項)。

注意する点もいくつかあります。認可の可能性について、職員の雇用問題について、担保権の問題についてなどの詳細に判断しなければならない問題があります。上記はあくまでも考えられる問題の抜粋です。しっかりとしたデューデリジェンス(法務監査)が必須です。問題の詳細については、ご相談ください。

病院を買収する候補(買取る候補)

医療法人が合併の買取り候補となることは認められています。ただ、医療法人にみの病院等の買収が認められているわけではありません。それ以外の団体においても買収することは認められると解されます。考えられる相手としては、個人、公益法人、学校法人、社会福祉法人が考えられます。これらの法人は病院などを買収することができます。ただし、買収するにおいては、都道府県知事の許可を得る必要があります。 株式会社においては、病院経営に参画することはできません。当然に病院買収の候補となること自体できません。

もう一歩先へ
ここで大きな疑問が生じます。「大企業が病院を開設している例があります。これは、株式会社が病院経営に参入できないことに反するのでは?」この答えが気になる方は、お問合せください。
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当事務所の関わり(依頼のメリット)

医療法人に関する事項(設立・変更・合併・医療機器に関する等)においては、行政機関に対する許可申請が多く、これを避けて通れません。行政書士は、許認可申請に精通しており、代理して随時必要な許認可申請・折衝を行うことが出来ます。さらに、合併等に関する契約書の作成、条件交渉、法的審査(デューデリジェンス)も代理人として行います。

当事務所は、皆さまを全力でフルサポート出来る存在であります。手続き、提出書類は膨大になります。また、後日の紛争(訴訟)を回避するための法的論点の整理を行うことは、予防法務の観点から必須に事項といえます。煩雑な事務作業は専門家にお任せください。 まずは、専門家に話を聞いてみることがスタートです。お問い合わせのみも歓迎です。

★当事務所の最大の強みは、単に手続きの代理・代行に留まらないことです。その後に生ずる事項を含めた総合的・一体的な法的サービス・アドバイスが行えることにあります。

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